ロボットを動かすためにはアクチュエータがいるわけで,多くはモーターを使うことになると思います.
で,そのモーターを動かすためには,モータードライブ回路が必要なわけですが、
これには素子や回路の組み合わせで,実に様々な回路が存在します.
ここでは,それらについて触れ,またロボコンに適すると思われる回路を提案したいと思います.
図1 基本スイッチ回路
これでモーター電圧をON/OFFすることができます。
しかし。「こんな回路は当たり前」と思われるような簡単な回路ですが,実はこの回路には
重大な問題があることをご存知でしょうか。それをこれから解明していきましょう。
モーターの電機子等価回路は,下図のように抵抗とコイルを直列接続したR-L回路で表されます。
図2 電機子を等価回路で表した図(抵抗とコイルで表される)
例えばスイッチをONして,しばらくしてからこれを突然OFFすると,どういうことが起こるでしょうか。
これを考えてみましょう。
まず,モーターのコイルの部分だけに着目すると,モーターに電流を流している状態は
下の図3のように表されます。
図3 モーター(のコイル)に電流を流している状態
コイルに電流を流すと,「右ねじの法則」に従って,青線のような磁束が発生します。
ここで,突然スイッチをOFFする=電流を遮断すると,次のような現象が起こります。
コイルには,「磁束の変化を妨げる方向へと電圧を発生する」という特性があります。
すなわち,突然電流を遮断する=磁束が消えようとする ということになるのですが,
コイルはこれを嫌がり,先ほどまでの磁束を維持しようと,つまり先ほど電流が流れていた方向へと
電流を流そうとし,電圧を発生させるのです。
これを図で表すと,図4のようになります。
図4 突然電流を遮断すると
しかし,当然スイッチがOFFしているので,電流が流れることはありません。
というわけで,コイル両端電圧=モーター端子電圧は瞬間的に跳ね上がり,
電源電圧をとうに超えるような電圧となってしまいます。
これがスイッチの絶縁耐圧を超えてしまうと,最悪スイッチが壊れます。
機械式のスイッチならそう簡単には壊れませんが,トランジスタのような
半導体スイッチなら,一瞬でアウトです。
では,どうすればよいのかということになりますが,要はスイッチを切っても,
電流が流れるような経路を用意してやればよい,ということになります。
その答えが,下の図5です。
図5 ダイオードを逆並列に接続する
こうすることで,スイッチを切っても,電流は赤線の経路をたどって流れるため,
過大な電圧が発生することもありません。
このようなダイオードを還流ダイオードまたはフリーホイーリングダイオードといいます。
また,たまに「フライホイールダイオード」と言う人も居ますが,
これは何だかおかしい気がします。なぜフライホイールなんでしょうか?
恐らく,誰かが最初に聞き間違えて,それが広まってしまったのではないかと勝手に思っているのですが。
どなたか,知ってたら教えてください。
以上で,モータードライブ回路1の項は終了です。
このような基本的なスイッチ回路でも,あなどってはいけません。
この回路では,モーターに逆並列にダイオードを付けることが重要です。
次回のモータードライブ回路2では,このモーターを電池一本で正逆回転させることのできる
Hブリッジ回路とその制御法について考えてみたいと思います。